指宿菜の花マーチ

通勤の時しか歩かなかった私が一念発起して鳥海ツーデーマーチに初めて参加して以来、私の人生は今までとは違った方向に動き出したようです。あくまで健康のためのウォーキングに過ぎなかったのが、今では新たな生甲斐になりつつあります。普段は歩けない色々な土地の自然の中を歩きたくて、そして歩く仲間に会いたくて夢中で大会に参加してきました。

オッパーさんからのご指摘があるまではまさか自分がマスターウォーカーの条件をクリアしている事には気がつきませんでした。いつもステージ上で表彰されている方々を祝福するだけだったのが自分がステージに立てるなどとは夢にも思いませんでした。この場を借りて祝福を頂いたすべての方々に深くお礼を申し上げます。今後は更なる高い目標に向かってこつこつと努力していきたいと思いますのでどうかよろしくお願いします。

今回の指宿へのツアーは河口湖で初めて大会に参加してウォーキングの楽しさに目覚めて名護でも一緒に歩いたO君と、同じく会社の同僚でゴルフのスコアアップのために歩きたいというT君の3人での珍道中です。なんと都合が良い事にO君の実家は偶然にも今回の大会開催地の指宿市で彼には土地勘もあり自ら進んでガイド役を引き受けてくれました。現地までの足や宿などはすべてO君に手配をしてもらったのでとってもらくちんでした。いつも一人きりで旅をしているのでケアをしてもらうのは本当にありがたいものですね。

例によって仕事とウォーキングの両立を目指している我々3人は6時まではきっちり仕事をします。急いで会社を出て羽田に向かい7時50分の飛行機で鹿児島に飛び立ちました。いつもの出張のようにラウンジの無料ビールで出来上がってから搭乗しましたので、あっという間に鹿児島に到着です。早速レンタカーを借りて指宿まで深夜のドライブです。小雨が降っていたのでちょっと憂鬱な気分です。天気予報では明日も明後日も雨または雪となっていました。

他の二人は雨でかなり気落ちしているようでしたので、ウォーキングとは自然とのお付き合いだとなぐさめました。ドイツには有名な格言があって直訳すると「お前は砂糖でできているわけではない」という意味の言葉ですが、要は雨を気にするなという意味の格言です。なんだかとても気が利いている表現だと思いませんか?

宿にチェックインできたのは夜中の11時ころでした。早速宿の温泉につかって今までのお酒を抜いた後にO君の案内で市内の繁華街を散策することにしました。指宿の駅前の繁華街はとてもコンパクトでしたが遅くまでお客さんで賑わっていました。こうして毎回各地の繁華街を散策できるのも地方症の大きな楽しみですね。3人で鹿児島の郷土料理のさつまあげ(現地では「ちきあげ」と呼んでました)と焼酎で乾杯です。

気候が良いせいでしょうか?なぜか焼酎のお湯割が妙にうまいのです。東京で飲む焼酎よりははるかに飲みやすくうまいのです。同じものを飲んでいるはずなのに全く不思議なものですね。程なく焼酎の四合ボトルが空になったのでそろそろ宿に戻って明日に備えることにしました。今回はT君が初参加ですので、私も彼と一緒に25キロコースを話をしながら一緒に歩くことにしました。もちろん40キロを歩きたかったのですが歩く仲間を一人でも多くこの世界に引き込むこと最優先したかったからです。

大会初日の朝は小雪がぱらついていました。40キロの出発時間の7時ころはまだ空は真っ暗でした。車で開聞岳の麓の出発会場に向かいます。すでに40キロは出発した後なので顔見知りのメンバーとはお会いできなかったのが残念でした。しかし雪を被った開聞岳の頂上が間近に見えたのに感動しました。地元出身のO君にとっても大変珍しい景色だそうで、我々訪問者にはもう二度と見られない景色かもしれませんね。

3人で参加準備をしていたらなんとあさひさんに声をかけてもらいました。あさひさんは花をこよなく愛する正統派のウォーカーで、あさひさん提供によるカプリスのケーキは参加者全員の完歩後の大きな楽しみとして定着しています。そんなあさひさんから素晴らしいプレゼントを頂きました。そうです。伝説のCWの名前バッジでした。あさひさん手書きのサングラスをかけたブタさんが「おやじん」という文字に抱きついている大変に凝ったバッジです。

このバッジはあさひさんが大会で出会った個人的な知り合いにのみに不定期で渡される大変貴重な物です。このバッジを作るためにどれほどの時間を割いて頂いたのかを考えると本当にありがたい気持ちで一杯になりました。さっそく一番目立つところに装着しました。ある意味では私にとってマスターウォーカー受賞以上の喜びです。あさひさん本当にありがとうございました。

さていよいよ25キロの出発です。コースは開聞岳を一周して日本最南端の西大山駅に寄って唐船峡を迂回して戻ってくる起伏に富んだコースでした。まさに開聞岳と菜の花畑に囲まれた自然を楽しめる素晴らしいコースだったと思います。ただ気温が低かったせいで筋肉が硬直してしまったようで、これで大会3回目のO君はバリバリと歩いていましたが、案の定初参加のT君は途中でかなり疲れてしまったようです。

T君はスポーツマンでゴルフもシングルの腕前でウォーキングには自信を持って今回の大会に臨んだようでしたが、やはりウォーキングに慣れていないせいか足が棒になってしまったようです。所々で休憩を入れながらストレッチで寒さで硬直した筋肉を伸ばしながらゴールを目指します。途中の休憩所でオレンジ隊海野さんご夫妻にお声をかけて頂きました。ちょうどお昼時だったので指宿の郷土料理の唐船峡の「そうめん流し」を食べることにしました。

O君によると指宿では家族でそうめん流しを食べるのが一般的な家庭の休日の楽しみ方だそうです。彼にとっては一種のソウルフード的な思い入れがあるようですので、百聞は一見にしかずと思って3人で食べてみることにしました。透明なアクリルの板で出来た丸い水槽の中に水を一方方向に噴出するノズルが取り付けられています。いわば豊島園の廻るプールの小さいものですね。その中にそうめんを流して箸ですくって食べるという趣向です。

そうめん流しがある唐船峡という場所は結構深い渓谷でその谷底は夏でもひんやりとしています。そこで流水に漂うそうめんを食べるというのは大変に涼しげな食べ物で暑さが厳しい指宿の夏に食べるには最高の料理だと思いました。しかし今日は雪が降って筋肉が硬直するくらいの気温ですので、このミスマッチはある意味では一生の思い出になることは間違いありません。

25キロを無事に歩き終えてゴールしました。40キロの俊足グループのYKさん、あのあのさん、ふらのっちさんとお会いできました。このまま皆さんの到着を待ってイエローシートに突入したかったのですがT君がかなり疲れていたので団体行動を優先してみんなでサウナに行くことにしました。結局は天気予報は外れて今日は殆ど雨らしい雨は降りませんでした。大変ラッキーだったと思います。雪を被った開聞岳の眺めながら一面の菜の花畑の中を歩けただけで指宿まで来た甲斐があったというものです。

O君の案内で地元の人が行く公立の温泉施設に来てたっぷりとサウナと温泉で疲れた筋肉をケアしました。やはり歩いた後のサウナは最高ですね。3人とも大満足で完全に疲れをクリアして5時からの歓迎レセプションに望みました。歓迎レセプションでは指宿市長をはじめ市の偉い方々が多数出席されて、このイベントに対する指宿市の並々ならぬ取り組みが伝わってきます。その後いよいよ私のマスターの表彰でしたがステージ上では本当にたくさんの方々に声をかけてもらって感激しました。鳥海では一人で寂しい思いをしたのがずいぶん昔のように感じましたが実際にはたった4ヶ月前なのですね。みなさんのお心遣いはずっと忘れません。ありがとうございました。

翌朝に早起きして露天風呂に入りましたが吹雪でした。T君は吹雪を見てさらに昨日の疲れもあって戦意喪失気味です。結局今日は歩かずに市内をあちこち観光したいとの事。O君はT君のガイドとして行動することにしました。確かに昨日の様子を見れば無理やり20キロに誘っても完歩はおぼつかないと思いますし、ゆっくりしてもらって大会の良い思い出だけを持って帰ってもらうほうが良いと判断しました。後にT君は普段もっと歩いてトレーニングした上で他の大会に参加したいと言っていましたのでこれで正解だったようです。また一人歩く仲間が増えました。

2日目のコースは魚見岳を一周した後に海沿いを歩いて名物の砂むし温泉の横を通って市内を抜けて揖宿神社でおはらいを受けてゴールするというコースでした。距離も20キロと短いのですがなにしろ寒いのです。特に海岸沿いを歩くコースは潮風がまともに吹きつけているのでフードをかぶって淡々と歩いていたら自称サラリーマンウォーカーの山本さんに「おやじんさんですか?」お声がけ頂きました。さっそくあさひさんのバッジが功を奏したようです。山本さんとは私と同業のソフト開発の話題で話がはずみました。

私が寒い中を歩いている間にT君は指宿名物の砂むし温泉を楽しんでいました。O君の案内で地元の人間が行く町営の浴場に行ったらしいのですが、砂が疲れた足を適度に圧迫して心臓の鼓動にあわせてピクピクすると感想を述べていました。わずか20分の入浴だったそうですが十分に汗をかいて最高に気持ちが良かったようです。その後彼らは車で池田湖を観に行ったようです。

私の方は市内を抜けて指宿市役所を経由して揖宿神社にやってきました。ここはチェックポイントなのですがお神酒や神主さんによるお払いがサービスされていました。まさに今までの大会の中でも最もユニークなチェックポイントだと言えそうです。あとはゴールまでもう数キロというところまで来ましたが20キロコースだけは他の距離コースと対面方向に進むので他の参加者の団体と真正面からすれ違って進みましたが、狭い歩道でしたので大変歩きにくかったです。道の右と左でコースを分けてもらう配慮が欲しかったです。

コース途中でT君とO君に携帯で予想ゴール時間を伝えてゴールまで迎えにきてもらうようにお願いしました。昼前にはゴールしましたが会場では先行のオレンジ隊や海野さんオッパーさんが出迎えてくれました。なにげなく話していたところ去年の年末の清水さんの件を初めて教えてもらいました。正直言ってかなりのショックでした。前回の大会でも抱き合って握手したのにもう会えないなんて人生とはなんと先の見えないものなのでしょうか?他の二人が迎えに到着したのでとぼとぼとその場を離れて帰路につきました。なんかとても寂しい気持ちの大会のフィニッシュでした。

その後は気を取り直してみんなで鹿児島市内へ向かいました。飛行機までは少し時間があったので鹿児島名物の「ざぼんラーメン」というお店に寄って昼食をとりましたが、かなりうまかったです。鹿児島のラーメンは他の九州のラーメンとは明らかに違っていました。素晴らしくダシが聞いて甘いスープとうどんのような麺が特徴です。鹿児島ラーメンは全国区ではあまり有名ではないようですがもっと広まっても良いのではという印象でした。空港について一本早い飛行機に変更して東京へ戻りました。もちろん東京到着後にサウナでリフレッシュしたのは言うまでもありません。

今回のツアーを総括するとなんといっても雪を冠した開聞岳の一言でした。素晴らしい自然の中を思い切り歩けた事はなにより幸せでした。温泉とおいしい焼酎。マスター受賞そして祝福してくれる素晴らしい仲間たち。あさひさんの手作りのバッジ。清水さんの悲しい知らせなどの思い出が一杯の指宿遠征となりました。またいつかこの素晴らしい土地を歩く事を夢見ながら、また現実の仕事の世界に戻ることにします。

今回のレポートはこれでおしまいです。だらだらと長文で失礼しました。

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