■第9章 フォーデーマーチ三日目

オランダの運河沿いを歩く

真っ暗な朝4時の出発も三日目ともなるともう慣れてきました。いつものバス停でいつものベテランウォーカーと挨拶を交わします。彼から今日のコースのことをいろいろ教えてもらいました。なんでも今日のコースの最後は目の前のバス道路を通るそうです。仮でも自分の住んでいる場所を通るなんてちょっと楽しみです。

時間どおりにバスが来ましたが昨日までバス停に来ていた若者二人が残念ながら現れません。恐らくリタイヤしたものと思います。可愛そうですが厳しい現実ですね。バスの中ではいつものメンバーと元気に挨拶を交わして会場へ。

日を追うごとにスタート時の送り出しがスムーズになって出発時間がどんどん早くなりました。5分ほどでスムーズにスタートできました。さすがに三日目ともなると皆の歩くペースもかなり遅くなってきて自分のペースで歩いても抜かされることが少なくなってきました。さすがのヨーロッパの健脚たちもだんだんペースが落ちてくるようですね。

昨日と同じように軍隊と合流後に水辺の田舎道を気分良く進んでいきました。麦やとうもろこし畑が見渡す限り続いている素晴らしい眺めのコースは歩く者を自然とリラックスさせてくれます。今日は田舎を中心に歩くコースのようです。

相変わらず沿道の応援はにぎやかで本当に楽しく歩けます。ちょっと気がついたのですが子供達がタッチを求めて来るのに答えてタッチをするのですが、私は手袋をしているので大変珍しい様子でした。おかしいなと思って周りのウォーカーを観察してみると驚くべきことに手袋をしているウォーカーは只の一人もいないのです。どうやら歩きの本場のヨーロッパのウォーカーは手袋をする習慣はないようです。

私自身は手のむくみに効果があると信じて手袋をしているのですが、なんだか本当に効果があるのか自信が無くなって来ました。また他のウォーカーに普段はサイクリングしているのか?と言われるのですが恐らくタイツのようなぴったりとしたスパッツと手袋の組み合わせはまるで自転車に乗るスタイルに見えるのだと思います。次回はちょっとスタイルにも気を配る必要がありそうです。

沿道にはあちこちに休憩所が設けられています。この休憩所には色々な種類があります。まずは軍とか警察などの組織が運営している休憩所です。この休憩所は民間人でも利用が可能です。また企業が運営している休憩所も目立ちます。ここはその企業の配布しているTシャツなどを着ているウォーカーのみにサービスを提供しています。

恐らく企業が接待目的でお世話になっている参加者にTシャツを配布しているものと思われます。また国旗を掲げて同郷の国の人を対象にした休憩所や、何かのサークルや企業や団体のOBが後輩の為に設けている私設休憩所なども目立ちます。あるいはサンドイッチや飲み物などの販売を目的とした休憩所や家族や知り合いのために庭先に休憩所を設営している家庭も目立ちます。

どの休憩所を利用して良いのか最初は戸惑いますが基本的にはサンドイッチや水などを売っている所の休憩所は何かを買えば胸を張って利用できますので安心です。また沿道に置いてある椅子などは一声かければ利用できますがくれぐれも黙って座ってしまうことのない様にしましょう。基本的には一声かければ喜んで座らせてくれますし色々な物をふるまってくれます。こうした交流を積極的に楽しむことが接待をしてくれる方々への何よりのお礼になります。

コース上の軍の施設は一般人でも利用できます。立派なトイレなどもありますし特にマメの手当てをする野戦病院は多くのウォーカーが行列を作ってごった返しています。マメの手当てといっても水抜きをして厚手のテープを張るだけですのでテープを持っていけば自分で手当てしたほうが早いと思います。見ていて気がついたのですが彼らがマメの手当てに使うテープはかなり硬いテープで第2の皮膚としてがっちりマメを保護してくれるものです。しかしそうであれば最初からこのテープを張って歩けばマメは出来ないのではと思いますが・・・・

トイレの長い列

またトイレも重要な問題となります。男性は町と町の間で民家の無いところの沿道でちょっと見えないところに隠れて簡単に用を済ませているケースが多いようです。しかし女性向けのきちんとしたトイレは行列が出来ている場合が多いようです。また沿道の普通の家でも声をかければトイレを貸してくれる所も多いと思います。また非常時に背の高いとうもろこし畑の奥に消えていく女性ウォーカーも数多く見かけました。やはりウォーカーはトイレや空腹など自分の状態をきちんと把握して早め早めに行動をするというマネージメントが大切ですね。

三日目は後半にちょっとした高低差がある道路を進みます。高低差といっても50mもありませんので楽勝ですが沿道には故障者が増えてきました。足を引きずっているウォーカーやマメの手当てをするウォーカーも目立ってきています。フォーデーマーチに慣れているはずの健脚ウォーカー達でもやはり三日目ともなると疲れが蓄積してくるのかも知れません。私は運良くマメもできずに絶好調で歩いています。ちょっとだけ自信をもてました。

終盤になると朝バスで通った自分のホテルのすぐそばの道を歩きました。もちろん道路はウォーカー専用ですので車は通行できません。ふと考えると帰りのバスも通れないという事です。今日はどうやって帰ってくれば良いのか不安になりましたが、ちょっと住民側の気持ちがわかったような気がします。

自分の町がコースになっている日はウォーカーに占有されて車は利用できなくなってしまいます。こんな日は仕事にならないので割り切って朝からお祭りにしてしまって町全体で楽しんでしまおうという事なのかもしれません。まさに年に一度の夏のお祭りになっています。日本でいえばお盆の時期に家族全員が集まって庭でパーティーをして楽しんでいるのと同じですね。

三日目も無事にゴールする事が出来ました。そしてゴールの受付で私にとって最後になる4日目のコントロールカードを受けとりました。ゴール係りの方からはあと一日だねと励まされました。あとは這ってでも良いから明日の午後6時までにこの最後のカードをここに持って来ればすべてが終了です。ストレッチの後にすっかり常連になったイタリアンレストランに行ってゆっくりと食事をしました。いつもよりも長めに時間をつぶしてウォーカーがコースからいなくなってからバスでホテルに戻りました。

いつもの風呂、洗濯、ビタミン補給、ディクトン足裏ケア、メール処理、ストレッチしてから床につきました。本日のしっかり歩数は67935歩でした。三日目が終わった感想としては少し筋肉は張っていますが明日一日くらいは問題なく歩けそうです。すでに日本スリーデーと同じく50キロを3日間歩いた後なのに全く疲れていません。この段階でもしかすると完歩できるかも知れないと思いました。そう考えると少し寂しい気持ちになってしまいます。この楽しく素晴らしいウォークも明日で終わってしまうのですから・・・午後7時に眠りにつきました。

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